骨髄増殖性腫瘍(myeloproliferative neoplasms; MPN)とは、赤色骨髄の働きが病的に盛んになって、赤血球、白血球あるいは血小板が増加する疾患です。造血幹細胞レベルでの腫瘍化によって、骨髄系細胞(顆粒球、赤芽球、骨髄巨核球、肥満細胞)の著しい増殖を特徴とします。クローン性疾患で、チロシンキナーゼの恒常的な活性化を病態とする疾患群です。慢性骨髄増殖性疾患(chronic myeloproliferative disorders; CMPD)ともいいます。
慢性骨髄増殖性疾患(D47.1)には、ICD10上で骨髄線維症と慢性骨髄増殖性疾患が含まれている。慢性骨髄増殖性疾患は、1951年に米国のダム シェック医師が初めて提唱した疾患概念で、血液細胞の増加や脾腫、病気がお互いに移行したりするなど、よく似た病態を示す病気に注目して付けられた疾患名である。当時は、慢性骨髄性白血病、真性赤血球増加症(真性多血症)、本態性血小板血症、原発性骨髄線維症の4疾患であったが、2008年のWHO分類第4版ではさらに4疾患が加えられ8疾患となっている。この際に骨髄増殖性疾患から骨髄増殖性腫瘍へと疾患名称も変更された。
「造血器腫瘍診療ガイドライン2013年版」によると、骨髄増殖性腫瘍(myeloproliferative neoplasms; MPN)には以下のものがあります。
1. 真性多血症(polycythemia vera; PV)
2. 慢性骨髄性白血病(chronic myelogenous leukemia;CML)
3. 本態性血小板血症(essential thrombocythemia;ET)
4. 原発性骨髄線維症(primary myelofibrosis;PMF)
5. 慢性好中球性白血病(chronic neutrophilic leukemia;CNL)
6. 慢性好酸球性白血病(chronic eosinophilic leukemia;CEL)
7. 好酸球増加症候群(hypereosinophilic syndrome;HES)
8. 肥満細胞症(mastocytosis)
分類不能骨髄増殖性腫瘍(myeloproliferative neoplasms,unclassifiable; MPN,U)
ICD-10上の慢性骨髄増殖性疾患(D47.1)に上記疾患すべてを含めるかどうかは、各生命保険会社の個別判断である。というのも普通保険約款に記載されている2003年版のICD-10分類とは異なるからである。
真正多血症では、赤血球の増加が著しくなるため、顔面が赤ら顔になります。白血球中に含まれるヒスタミン等の物質が放出されるため全身に掻痒感が起こることもあります。一般には自覚症状が少なく、脾腫が触れるだけのこともあります。
本態性血小板血症は、血小板数が著しく増加することが特徴です。増加する血小板の働きが亢進する場合と低下する場合があります。亢進すれば血栓症を起こし、低下すれば出血症状を起こします。つまり血栓症が起こると、痛みや冷感を伴ったり、出血症状は皮下に紫斑と呼ばれる青あざが出ます。
原発性骨髄線維症は、貧血、脾腫、腹部膨満が特徴で、貧血が進行すると輸血、造血を促進する蛋白同化ホルモン剤の投与などを行います。脾腫が大きい場合には、脾臓摘出手術を行うこともあります。急性骨髄線維症は、骨髄の線維化を伴いますが、急性巨核芽球性白血病の亜型と考えられます。
慢性骨髄増殖性腫瘍の経過は、相対的にゆっくりで生存中央値と呼ばれる期間は、真正多血症で10年、本態性血小板血症で5年以上、骨髄線維症で3~4年といわれています。急性白血病に変化して行くこともあり、この場合は極めて予後不良です。
さらに骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndrome)との関連も示唆されています。また、骨髄異形成症候群様の無効造血と骨髄増殖性腫瘍様の過剰な増殖の双方の性格を併せ持つ症例の存在も知られるようになりました。これをWHO分類第4版から、骨髄異形成/骨髄増殖性腫瘍(myelodysplastic/myeloproliferative neoplasm; MDS/MPN) と呼ばれています。
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