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胚細胞腫瘍

胚細胞は、雄または雌の生殖細胞のことで、1セットの染色体23本(半数体)を持っています。ヒトの体細胞には2セットの染色体計46本があります。減数分裂により1次(2n)から2次卵(精)母細胞(n)が生じます。


1次卵母細胞(2n)→2次卵母細胞(n)→卵細胞(n)

1次精母細胞(2n)→2次精母細胞(n)→精細胞(n)→精子(n)


胚細胞腫瘍とは、卵子や精子となる原生殖細胞(胚細胞)から発生した腫瘍をいいます。主に精巣と卵巣に発生し、これらを性腺胚細胞腫瘍といいます。一方、頭蓋内に胚細胞腫瘍が起こることがあり、頭蓋内胚細胞腫瘍と呼ばれています。頭蓋内胚細胞腫瘍は原発性脳腫瘍の3%を占めます。胚細胞腫瘍の発生部位からは次の3つに分けられます。胚細胞腫瘍の95%が性腺原発です。


(1)性腺(精巣、卵巣)

(2)頭蓋内(松果体、視交叉)

(3)頭蓋外性腺外(縦郭、後腹膜、仙尾部)


発生学によると、生殖腺は生殖腺は中腎の腹側にある生殖堤から形成され、発生第 6 週に卵黄嚢後部から原始(始原)生殖細胞が生殖堤に侵入することにより発生を開始します。このため胚細胞腫瘍は体の中心線上に分布することになります。


性腺原発の胚細胞腫瘍の頻度は、本邦で1~2名/10万人です。頭蓋内胚細胞腫瘍は、小児脳腫瘍の15.3%を占め、1.5名/10万人の頻度です。精巣胚細胞腫瘍は年間2000~3000人、卵巣胚細胞腫瘍は年間125人、頭蓋内胚細胞腫瘍は年間150~200人程度と推計されています。したがって精巣胚細胞腫瘍がほぼ太宗を占めていることが分かります。以下は精巣胚細胞腫瘍について述べます。


精巣胚細胞腫瘍の病理組織型は、セミノーマ(40%)と非セミノーマ(60%)に分けられます。腫瘍がセミノーマ成分のみで構成されるものがセミノーマになり、それ以外は非セミノーマに分類されます。非セミノーマは胎児性がんでαフェトプロテインの上昇を示します。非セミノーマは、奇形腫、卵黄嚢腫と絨毛癌に分かれます。危険因子としては、停留精巣、萎縮精巣、クラインフェルター症候群、家族歴、対側の精巣腫瘍、不妊などがあります。


精巣胚細胞腫瘍の臨床病期分類は、病期1期から病期3期で、根治がほぼ不可能とされる病期4期がありません。精巣に限局しているものは病期1期、後腹膜リンパ節に転移があるものは病期2期、縦郭リンパ節や鎖骨上リンパ節に転移があるものや肺転移のあるものは病期3期、腫瘍マーカー陽性のものは病期2期または3期となります。腫瘍マーカー(AFP、β-HCG、LDH)が病気の状況を鋭敏に反映することから病期分類に含まれるのが特徴です。特にβ-HCGは胚細胞腫瘍全般で上昇するので、男性に対して妊娠検査薬で陽性であれば精巣胚細胞腫瘍と診断できます。


臨床病期1期の精巣精巣胚細胞腫瘍の治療については、治療と組織学的診断を目的として高位精巣摘除術が行われます。生検は禁忌です。??術後に、カルボプラチン単独による抗がん剤治療、傍大動脈領域への照射(20Gy)をする放射線治療が行われます。再発のリスク因子としては、4cmを超える腫瘍サイズと精巣網浸潤がありますが、高位精巣摘除術に経過観察をした場合の再発率は約15~20%と考えられています。


臨床病期2期以上の進行性胚細胞腫瘍の治療については、非セミノーマの場合は化学療法後に腫瘍マーカーの正常化を確認し、後腹膜リンパ節の残存腫瘍を切除することが行われます。セミノーマの場合は奇形腫が含まれる可能性が極めて低いことから、90%以上の縮小や残存が3cm以下では経過観察とすることもあります。予後は腫瘍マーカー値を用いたIGCCCG分類によるリスク評価があります。


注)精巣腫瘍の臨床病期には病期0期もあります。







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