心不全(heart failure)の引受査定は、引受不可です。高齢の被保険者で慢性心不全の治療中との告知となるかと考えます。急性心不全は生命の危機であり、既に入院している状態でしょう。よって心不全については、支払査定の観点からという話となります。心不全は、循環器疾患の終末像であり、様々な原因で慢性心不全の状態となります。病名というよりも病態を表していると考えます。
心不全の定義
心不全とは、心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気である。
上記の定義を少し深読みしてみると、「心臓が悪い」とは何らかの心臓疾患が基礎疾患としてあることが示唆されます。主な原因としては、心筋梗塞、弁膜症、心筋症、心筋炎、高血圧、不整脈などがあります。「息切れやむくみ」は心不全の重要な症状です。左心不全による肺水腫から息切れ(shortness of breath; SOB)が起こります。また、右心不全による静脈血の還流障害から下肢の浮腫が起こります。そして病態が「だんだん悪くなり」つまり慢性心不全状態が急性増悪して致死的となります。心不全は突然死リスクの高い予後不良な疾患と言えます。
心不全(heart failure)とは、心臓が十分な血液を送り出すことができない状態です。日本における心不全患者数は、50万~100万人といわれてます。最終的には心臓の収縮機能低下から肺うっ血や浮腫を引き起こします。1980年代以降の疫学調査によると、実際には左室駆出率(LVEF)が正常と判断される症例がうっ血性心不全患者の30~50%を占めることが明らかとなりました。左室の拡張機能障害が原因と推測され、この病態を拡張期心不全と呼び、英語でHFpEF(heart failure with preserved ejection fraction)と略します。現在では、拡張期心不全が起こり、それに収縮期心不全が続き、うっ血性心不全に至ると考えられています。
すなわち心不全には、心臓の心臓の収縮期サイクルに対応して収縮期心不全(systolic heart failure; SHF)と拡張期心不全(diastolic heart failure; DHF)があります。収縮期心不全は、心筋の収縮力が低下することで、心拍出量つまり血液の駆出量が50%以下に低下した状態です。一方、拡張期心不全は、心室筋の肥厚などにより拡張期に十分な量の血液が心室に流入しないことで、駆出される血液量が減少した状態です。拡張期心不全によるうっ血性心不全の発症は高齢者と女性に多いことが知られています。コントロール不良な高血圧が基礎疾患としてあることが多いようです。難治性高血圧が原因となっている心不全ということです。
左室駆出率は、左心室機能に関係する指標の1つで、左室駆出率が50%未満のとき左室収縮機能不全と推定されます。測定時の血行動態、特に後負荷の影響を大きく受けるため、LVEF値のみでは左室収縮機能を正確に評価できません。LVEFは左室拡張末期容積に対する左室駆出血液量の比で定義されますが、より簡便には次式として求められます。
LVEF=(左室拡張末期容積-左室収縮末期容積)÷左室拡張末期容積
僧帽弁や大動脈弁の逆流、シャント疾患などが存在する場合には、実際の駆出率を過大評価することがあるため注意が必要です。健常人のLVEFは、60~70%が基準値下限と言えるでしょう。
LVEFが40%の糖尿病患者における心不全または死亡のリスクは、LVEFが25%の非糖尿病者のそれと同等であるとの報告があります。つまり糖尿病は心不全の危険因子ということですね。
参考文献
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