天疱瘡(pemphigus)とは、自己免疫性水疱症ともいい、皮膚の表皮・粘膜の上皮のある成分を攻撃する抗体が作られ、表皮の細胞がバラバラに離れて皮膚に水疱が現れる病気です。IgG自己抗体が作られる原因は不明で、本来の体質に生活習慣や環境の影響が加わって生じると考えられています。最も多い尋常性天疱瘡では、口腔粘膜に広範囲に痛みを伴うびらんや、全身に発赤・水疱が現れ、火傷状態になり皮膚の表面から大量の水分が失われたり、感染をおこす場合があります。
天疱瘡は次の3つに分類されます。
尋常性天疱瘡(pemphigus vulgaris)
落葉状天疱瘡(pemphigus foliaceus)
腫瘍随伴性天疱瘡(paraneoplastic pemphigus)
診断基準
天疱瘡の診断確定は、下記のAの症状のうち1項目以上とBの検査所見1病理組織学的所見を満たし、Bの2免疫学的所見のうち1項目以上を満たす症例、あるいはAの症状のうち2項目以上とBの2免疫学的所見(1)と(2)を満たす症例です。
A 症状
1.皮膚に多発する破れやすい弛緩性水疱
2.水疱に続発する進行性、難治性のびらんあるいは鱗屑痂皮性局面
3.口腔粘膜を含む可視粘膜部の非感染性水疱あるいはびらん
4.ニコルスキー現象陽性
B 検査所見
1.病理組織学的所見
表皮細胞間接着障害(極融解)による表皮内水疱を認める。
2.免疫学的所見
(1)直接蛍光抗体法により、病変部ないし外見上正常な皮膚・粘膜部の細胞膜(間)部に IgG(ときに補体)の沈着を認める。
(2)血清中に抗表皮細胞膜(間)IgG自己抗体(抗デスモグレインIgG抗体)を、間接蛍光抗体法、ELISA法またはCLEIA法により同定する。
注)デスモグレインは、表皮細胞同士が接着するのに重要な役割を果たしている蛋白質で、デスモソームという接着装置に存在します。このデスモグレインに対するIgG自己抗体が抗デスモグレインIgG抗体です。天疱瘡の自己抗体は、デスモグレインに結合することで、その機能を障害します。その結果、表皮細胞同士がばらばらになり表皮内に水泡が形成されます。デスモグレインには、デスモグレイン1と3が存在し、前者は主に皮膚に存在し、後者は主に粘膜に存在し少し皮膚に存在します。この分布の違いから、デスモグレイン1のある落葉状天疱瘡と、デスモグレイン3のある尋常性天疱瘡とのそれぞれの症状の違いが生じます。
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