喘息は様々な気象条件により誘発されるとされますが、雷雨ぜんそく(thunderstorm asthma)は雷雨などの気象条件下で広範囲で重症喘息が発症する現象です。
雷雨ぜんそくはまれな現象で、花粉のようなアレルゲンと、雷雨のような気象条件が重なると、その地域のハイリスクの人々に重症の喘息などを起こします。
原因・症状
「雷雨ぜんそく」とは、雷雨の際に大気中の花粉が水分を急激に吸収し、膨張・破裂して小さく割れるときに起こると考えられています。
花粉は通常は大きな粒子で鼻の穴にある毛にひっかかりますが、割れて小さくなった花粉のかけらはアレルゲンが細粒化され、鼻を通り抜け、気管や肺の奥深くまで達して内部に付着してしまい症状を引き起こすと考えられています。喘息患者だけでなく、喘息の病歴が無い人にも起こり得ますが、花粉症の経験がある人は雷雨ぜんそくのリスクが高いとされています。花粉アレルギーをもつ人の場合、花粉に刺激された気管支は腫れ上がり、粘液で満たされて呼吸困難になってしまうのです。
花粉の破裂に関わっているのは、水分だけではありません。海外で発表された論文によると、雷雨による強い電場(電界)の影響も挙げられています。雷雨の電場によって、空気中の様々な成分が電気を帯び、花粉を破裂しやすくしていると考えられているようです。雷雨が起こってから20~30分の間で、地上におけるアレルゲン濃度はかなり上昇すると言われています。
海外での発生例
2016年11月 オーストラリアメルボルン近郊の町で強い雷雨が発生し、その直後から喘息発作での救急車を要請する電話が殺到、病院で治療を受けた人はメルボルン周辺だけで13,000人に達し、575人もの人が緊急入院しました。中には重症の方もおり、最終的に10名の犠牲者が出ました。呼吸困難に陥った人達の96%が、オーストラリアでは身近な場所に生えている「ライグラス」というイネ科の植物の花粉アレルギーを持っており、この花粉は11月に飛散するため、花粉の季節と雷雨の日が重なる事で起こる現象と判明しました。
幸い、日本では『スギ花粉症』がメインであり、オーストラリアで起きた『雷雨ぜんそく』の原因となる『イネ科植物花粉症』はあまり多くありません。今のところ日本で『雷雨ぜんそく』が問題になっていないのはそのためと考えられます。
また、中国北部・内モンゴル自治区のフフホトで、2023年9月に入ってぜんそく患者が急増しました。中国のフフホトの街ではススキが多いので、9月2日の大雨で花粉が粉砕され、雷雨ぜんそく患者が続出したとみられます。
まとめ
日本で圧倒的に多いのはスギ花粉症で、症状が出るのは3月〜4月です。この時期は台風などの発生は稀で、比較的天候が良いこともあり、今までは、日本国内で雷雨ぜんそくが大発生したという報告はありません。
しかし近年、地球温暖化などの環境変化による気候変動により、予想もしない時期に台風や大雨などの天候災害が起きるようになっており、日本でも雷雨ぜんそくが問題になる日が来るかもしれません。
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