原発性アルドステロン症(primary aldosteronism; PA)とは、副腎から自律的なアルドステロンの過剰産生が起こり、その結果、水・Na 貯留による高血圧と低カリウム血症、代謝性アルカローシスなどの症状を呈する病態です。原因となる病型には、次の5型があります。
(1)片側性のアルドステロン産生腺腫(aldosterone-producing adenoma: APA) (狭義のConn症候群)
(2)両側性副腎過形成による特発性アルドステロン症(idiopathic hyperaldosteronism; IHA)、
(3)片側性副腎過形成 (4)糖質コルチコイド反応性アルドステロン症(glucocorticoid-remediable aldosteronism: GRA) (5)アルドステロン産生癌腫(aldosterone-producing carcinoma: APC)

典型例では、低カリウム血症やそれに伴う症状がありますが、食塩バランスや薬物の影響により初診時に必ずしも低カリウム血症を示さない症例も多いです。APAの患者数が一番多いです。GRA ではアルドステロン合成酵素とステロイド 11β-水酸化酵素の 2 つの遺伝子が不均等交差によりキメラ遺伝子ができ、副腎過剰発現することによる発症します。家族性アルトステロン症および孤発性 APA 症例群の一部においてカリウムチャンネルの一種である Kir3.4 をコードする KNCJ5 のそれぞれゲノムレベル及び体細胞(腫瘍細胞)レベルにおける変異が同定されており、我が国の腺腫症例の約 70%が本体細胞変異を有します。その他、世界的には ATP1A1、ATP2B3、CACNCA1D、CTNNB1 など複数の分子の体細胞変異も同定されてきています。
原発性アルドステロン症(PA)の患者数は、国内で推定200万人~400万人とされています。これは全人口の1~2%、高血圧患者の10~20%に相当します。
PAは高血圧の原因の約5~10%を占めると言われており、高血圧患者数が多い日本においては、少なくとも100万人以上のPA患者がいると考えられています。
PAは指定難病ではありませんが、血圧を下げる薬では治すことができないため、病態に合わせた適切な治療を受ける必要があります。治療には、薬、手術、ラジオ波焼灼術などがあります。
2.疫学 平成22年度全国疫学調査では、5年間(2003-2007)の推定患者数7,487人と報告されているが、高血圧患者への本症スクリーニングが普及した結果、全高血圧症患者の5-10%程度とも推定されている。
原発性アルドステロン症の検査は、スクリーニング、確定診断、局在診断の3段階で行います。
スクリーニング 検査: 高血圧の方を対象に外来で血液検査を行い、アルドステロンとレニンを測定します。アルドステロンが高く、レニンが低い値の場合は原発性アルドステロン症が疑われます(スクリーニング陽性)。
確定診断: スクリーニング陽性の場合は、入院して確定診断を行います。確定診断には、以下の検査が行われます。
・カプトプリル負荷試験
・生理食塩水負荷試験
・経口食塩負荷試験(24時間蓄尿)
これらの検査は、片側性と両側性のどちらかを見分けるのにも役立ちます。
局在診断: 原発性アルドステロン症の腫瘍は小さいことが多く、CTで検出できない場合があります。また、40歳以上では、健康診断などで偶然副腎に腫瘍が見つかる(副腎偶発腫瘍)ことがありますが、その腫瘍がアルドステロンを作っているとは限りません。そこで、副腎静脈サンプリング検査(AVS)が必要となります。この検査は、左右どちらの副腎がアルドステロンを産生しているかを判断するのに役立ちます。
原発性アルドステロン症の症状は、高血圧および低カリウム血症が典型例での症状です。低カリウム血症がある場合は、口渇、多尿、多飲、筋力低下、四肢麻痺などを示すことがりますが、低カリウム血症を呈するのはPAの約半数以下でPAの診断における感度・特異度は低いです。 本症を放置すると脳卒中、心筋梗塞、不整脈、腎不全を高率に合併します。また、アルドステロン高値が長期にわたると、血圧値とは無関係に心血管系や腎臓に構造的な損傷が起こる可能性を示唆する報告もあります。
PA と確定診断された時の治療は、手術を希望する場合には局在診断まで行い、片側副腎病変か否かを確定し、副腎摘出術を行います。また、局在診断の結果、両側副腎病変と判定された場合や全身状態から手術不能例では、薬物療法(アルドステロン受容体拮抗薬が第一選択で、降圧が不十分な場合カルシウム拮抗薬等の他の降圧薬の併用を考慮)を行います。
PAが疑われる場合は、まず近くの内科を受診しましょう。内分泌代謝内科など専門の医療機関を紹介されることもあります。
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