自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder; ASD)とは、「精神障害の診断と統計マニュアル第5版;DSM-5」における、様々な神経発達障害(Neurodevelopmental disorder)の分類である。自閉スペクトラム(Autism spectrum)、自閉症連続体、自閉症スペクトルなどともいう。
診断基準 DSM-5によるASDの主な診断基準は次の2つを満たすことである。
(1)社会的コミュニケーションの障害
(2)限定された興味
典型的な症例では、生後2年以内に明らかとなる。有病率は0.65〜1%とされ、男女比は4:1と男児に多い。ASD児童のうち45〜60%は知的障害を、11〜39%はてんかんを併発すると報告されている。
原因は、脳機能の変異と考えられている。一般的には治療法は存在せず、一生続き、療育や支援に重きが置かれる対応がなされる。中核症状と関連症状を最小化し、患者のQOLを最大化することで、患者家族のストレスを軽減することが、治療の目標となる。
DSM-5では自閉症者をどのように支援すべきかの目安を得るために、『社会的なコミュニケーション』と『興味の限定・反復的な常同行動』の分野で『自閉症スペクトラムの重症度の区分』を設定している。その重症度の区分は、
・レベル1(一定の支援が必要)
・レベル2(多くの支援が必要)
・レベル3(極めて強力な支援が必要)
の3段階に分けられている。
DSM-5でASDを用いて再定義されたSM-IV-TRの疾患は次のとおり。
自閉性障害(autism)
アスペルガー症候群(Asperger syndrome)
特定不能の広汎性発達障害(PDD-NOS)
小児期崩壊性障害(CDD)
(参考)
DSM-5(2013年)における自閉症スペクトラム(Autism Spectrum Disorder;ASD)の診断基準は、以下のA、B、C、Dを満たしていることである。
A:社会的コミュニケーションおよび相互関係における持続的障害(以下の3点で示される)
1.社会的・情緒的な相互関係の障害。
2.他者との交流に用いられる非言語的コミュニケーション(ノンバーバル・コミュニケーション)の障害。
3.年齢相応の対人関係性の発達や維持の障害。
B:限定された反復する様式の行動、興味、活動(以下の2点以上の特徴で示される)
1.常同的で反復的な運動動作や物体の使用、あるいは話し方。
2.同一性へのこだわり、日常動作への融通の効かない執着、言語・非言語上の儀式的な行動パターン。
3.集中度・焦点づけが異常に強くて限定的であり、固定された興味がある。
4.感覚入力に対する敏感性あるいは鈍感性、あるいは感覚に関する環境に対する普通以上の関心。
C:症状は発達早期の段階で必ず出現するが、後になって明らかになるものもある。
D:症状は社会や職業その他の重要な機能に重大な障害を引き起こしている。
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